病気について
基礎知識
血液検査のよみ方
FT3、FT4、TSH(甲状腺機能検査)
甲状腺ホルモンにはT3とT4の2種類があり、甲状腺から分泌されるホルモンのほとんどはT4です。T3も一部は甲状腺から分泌されますが、多くは肝臓などの臓器でT4を材料に作られます。最終的にホルモンとして働いているのはT3です。したがって、甲状腺のホルモン合成能力を調べるにはT4、甲状腺ホルモンの全身への作用の程度を調べるにはT3を測定します。通常の状態ではT4が正常であれば、T3も必要なだけ作られます。また、T3とT4はタンパク質に結合しているものと、結合していないもの(フリー:F)があり、フリーのT3であるFT3とフリーのT4であるFT4を通常は測定します。
TSHは脳下垂体から分泌されるホルモンで、甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの分泌を増やす作用があります。脳下垂体は血液中の甲状腺ホルモンの量を監視していて、甲状腺ホルモンが足らないとTSHの分泌を増やして甲状腺を刺激します。甲状腺ホルモンが多すぎるとTSHの分泌を減らして甲状腺への刺激をストップします。したがって、TSHを測定することで甲状腺ホルモンの過不足を知ることができます。はっきりとした甲状腺機能異常の場合はFT3、FT4の測定により甲状腺ホルモンの過不足が分かりますが、ごく軽度の甲状腺機能異常の場合は、FT3、FT4の値が異常になる前にTSHが最初に正常範囲を外れます。したがって、甲状腺機能異常を軽度の段階で見つけるにはTSHの測定が必要です。
TgAb(抗サイログロブリン抗体)、TPOAb(TPO抗体)
橋本病は甲状腺に対する異常な免疫反応により、甲状腺に慢性の炎症が起こる病気です。この2種類の検査項目は甲状腺に対して異常な免疫反応が起きているかどうかを調べるための抗体検査です。これらの抗体の少なくとも1つが陽性であれば橋本病の可能性が高いと判断します。ただ、この2種類の抗体はバセドウ病でも陽性になることが多く、甲状腺機能検査とあわせて判断します。抗体の値が非常に高くなることがありますが、これらの抗体自体は体には害を与えませんので、数値が高いからといって心配する必要はありません。橋本病の診断のための目印と考えてください。橋本病の場合、90%の人はTgAbが陽性になります。TPOAbだけが陽性の人は10%以下ですので、橋本病の診断ではまずTgAbを測定します。TgAbが陰性でそれでも橋本病が疑われる場合はTPOAbも追加して測定します。
TRAb(TSHレセプター抗体)、TSAb(甲状腺刺激抗体)
バセドウ病は甲状腺に対する異常な免疫反応により、甲状腺を刺激する抗体が作られ、その抗体が甲状腺を刺激することで甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。この甲状腺を刺激する抗体を測定する検査項目が、TRAbとTSAbです。甲状腺ホルモンが高くなっている場合に、これらのいずれかの抗体が陽性であればバセドウ病と診断します。2つの抗体検査の違いは測定方法の違いです。TRAbは採血後40分程度で測定結果がわかりますが、TSAbは結果が判明するまでに1週間を要します。すぐに結果がわかること、診断能力はほぼ同等であることから通常はTRAbを測定します。一部のバセドウ病では2つの測定結果に食い違いが生じることがありますので、バセドウ病が疑われて測定したTRAbが陰性であった場合はTSAbを追加して測定することがあります。これらの抗体は診断目的以外に、バセドウ病の勢いを調べるときにも測定します。病勢が鎮まってくると抗体の値も低くなってきます。
サイログロブリン
甲状腺に腫瘍ができた時、甲状腺が橋本病やバセドウ病で腫れている時、甲状腺に炎症が起きている時などにサイログロブリンは高くなります。甲状腺腫瘍がある場合ですが、この検査の値で良性・悪性を区別することはできません。甲状腺ガンのために甲状腺を全て摘出した方では、再発のマーカーとしてこのサイログロブリンが役に立ちます。