岡本甲状腺クリニック

About illness

病気について

甲状腺腫瘍

甲状腺腫瘍

細胞診検査の結果について

甲状腺腫瘍の細胞診の結果は下記のように5つの区分に分けて判定されます。

  悪性の確率
① 検体不適正(Inadequate) 10%
② 正常あるいは良性(Normal or benign) <1%
③ 鑑別困難(Indeterminate)
A. 濾胞性腫瘍が疑われる
A-1. 良性の可能性が高い (favor benign) 5-15%
A-2. 良性・悪性の境界病変 (borderline) 15-30%
A-3. 悪性の可能性が高い (favor malignant) 40-60%
B. 濾胞性腫瘍以外が疑われる 40-60%
④ 悪性の疑い(Malignancy suspected) >80%
⑤ 悪性(Malignancy) 99%

■鑑別困難について

判定区分の③の鑑別困難の[A]の場合、その多くは良性腫瘍なのですが、細胞診では良性か悪性かの区別ができない濾胞がんというタイプのがんがこの区分に入ってきます。濾胞がんは1個1個の細胞そのものは、元々はっきりとした悪性の変化を有しておらず良性の顔つきをしています。そのために鑑別困難という表現がなされます。濾胞がんのほとんどは手術後の標本でしか診断できないのです。
このようなことから、当院では、不必要な手術はできるだけ避けながら、がんの可能性の高いものは手術をおすすめするために以下の方針を基本にしています。

細胞診で鑑別困難の[A]と判定された場合に手術が勧められる要素
  • ・細胞診で[A-3. 悪性の可能性が高い]と判定されたとき
  • ・超音波検査で悪性を疑わせる所見があるとき
  • ・腫瘍の大きさが4cm以上のとき
  • ・腫瘍が大きく、気管や食道を圧迫するとき
  • ・腫瘍が縦隔(胸の中)に侵入しているとき
  • ・美容上の観点で、本人が摘出を希望するとき

上に示した要素が認められない場合は経過観察をおすすめし、経過観察中に大きくなってくるようであれば、手術を検討いたします。
判定区分の③の鑑別困難の[B]の場合は細胞診検査を再度行うことで、良性・悪性がはっきりすることがありますので、期間を空けて再検査する場合があります。

記事監修 覚道健一

記事監修

学術顧問

覚道 健一(かくどう けんいち)

和歌山県立医科大学卒業(1973年)
日本病理学会病理専門医・指導医
日本臨床細胞学会細胞診専門医・指導医
和歌山県立医科大学 名誉教授

甲状腺微小がん

甲状腺微小がん

1cm以下の甲状腺がんを微小がんと呼び、詳しく調べると成人女性では1~3%程度の高い頻度で発見されます。そして、この微小がんはすぐに手術をせずに経過観察で問題ないという考えが主流になっています。微小がんは多くの場合、どんどん大きくなったり、命にかかわるような進行がんになったりしない場合が多いからです。ただ心配ないとは言っても、まれですが肺や骨などに遠隔転移することもあります。
また、手術を行ったときに顕微鏡で調べると微小がんでもリンパ節への転移が16~64%、甲状腺内の転移も23~33%の頻度で見つかります。しかしながら、顕微鏡でわかるレベルの転移は命にかかわることはまずないとされています。
以上のように、甲状腺微小がんの多くは手術をしなくても命にかかわること無く、経過観察が可能ですが、以下の要素がみられる場合は手術をおすすめしています。

診断時点で手術がすすめられる要素
  • ・がんが気管に食い込んでいる可能性のあるとき
  • ・がんが甲状腺の裏側表面に出ていて、声帯を動かす神経を侵している可能性があるとき
  • ・細胞診検査で細胞の悪性度が強いとき
  • ・超音波検査・細胞診検査でリンパ節転移を認めるとき
  • ・CT検査で肺や骨などへの遠隔転移があるとき(極めてまれ)

手術をせずに経過観察を行う場合は、1年に1~2回、甲状腺超音波検査と血中サイログロブリンの測定を行います。大きさが3 mm以上大きくなったり、1cmを超えてきたりした場合は手術を行います。また、リンパ節への転移、肺や骨への転移を認めた場合も手術を行います。手術の場合は、適切な甲状腺専門外科に紹介します。
手術がすすめられる要素がない場合でも、甲状腺がんをずっと持ったまま経過観察することに不安が大きく、気持ちの上での悪影響が強い場合は手術を選択されても決してまちがいではありません。適切な甲状腺専門外科に紹介します。
甲状腺機能検査で甲状腺機能低下症を認めたときや、甲状腺機能正常であっても低めのときは、甲状腺がんの進行予防の観点から、甲状腺ホルモン剤の服用をおすすめすることがあります。

腺腫様結節(せんしゅようこうじょうせんしゅ)

腺腫様結節(せんしゅようこうじょうせんしゅ)

甲状腺に1個から複数個の結節(しこり、こぶ)ができる病気です。できている結節の多くは厳密な意味での腫瘍ではなく、過形成と呼ばれるものです。ただ、腫瘍と過形成の区別は手術をして詳しく調べないとわかりませんので、診察では超音波検査などにより推測しての判断となります。結節ひとつひとつを腺腫様結節、複数個の腺腫様結節をまとめてひとつの病気として腺腫様甲状腺腫と呼んでいますが、厳密に区別しているわけではありません。通常は特に症状は無く、よほど大きくならない限り、声がかすれたり、ものを飲み込みにくくなったりする原因にはなりません。
良性の病気であり、基本的には治療をせずに年に1~2回、変化の有無を超音波検査と血液検査でみることになりますが、次の点に注意が必要です。

注意事項
  • ・複数個ある結節すべてが良性とは限らず、一部がガンの場合があるので、ひとつひとつの結節を超音波検査で注意深く観察します。ガンの疑いのある結節は細胞診検査でさらに詳しく調べ、手術が必要かどうか検討します。
  • ・数%の方で甲状腺ホルモンが出過ぎることがあります。この場合は甲状腺機能亢進症の治療のためにアイソトープ治療や手術をおこないます。
  • ・逆に甲状腺ホルモンの分泌が少なくなることもあります。この場合は甲状腺ホルモン剤を服用することで甲状腺機能を正常に保つことができます。
  • ・非常に大きくなって気管や食道を圧迫したり、縦隔(胸の中)に侵入してくることがあります。この場合は手術を検討します。
受診予約